主文を明らかにせよ

他人の書いた文章を読んでいると、ときどき「結局、何が言いたいのか分からない」文章に出会うことがあると思います。

書き手の言いたいことが伝わらない原因は何でしょうか?

あなたが書き手の立場になったときに、「何が言いたいのか分からない」と思われないために、何に注意すると良いでしょうか?

主文とは、書き手が本当に伝えたい一文のこと

一般に、文章は、多数の文から構成されています。その中でも、文章を通じて書き手が本当に伝えたい一文を「主文(しゅぶん)」と言います

しかし、書き手が主文を明らかにしない文章は少なくありません。文章中に主文が無く、読み手が行間を想像しなければならないこともあります。

主文が無いから、何が言いたいのか分からない

例えば、次の文書例には、主文がありません。典型的な「何が言いたいのか分からない」文章です。

例: 主文の無い文章
開発部
システム改修に関する検討状況
 先日、経理部から依頼のありましたシステム改修について、検討状況を報告します。
1. 経理部から要望のあった仕様を実現するには、約3カ月の工期が必要です。工期は、詳細検討の結果によって変動します。
2. システム改修の影響は、経理部に留まらず、事業部の業務フローに大きな影響を与えます。
3. 取引先とのデータ連携の一部を変更する必要があります。
4. 現在、開発部においては総務部から要望のあったシステム開発に取り組んでおり、新規案件に従事できる人員が不足しています。
以上

この例では、4つの課題が列挙されていますが、経理部が要望しているシステム改修を「できる」のか「できない」のか、書き手(開発部)はハッキリ書いていません。

もし「いまは無理(条件がそろえばできる)」という回答を意図しているなら、次のような主文を明記するべきです。

例: 主文を明記した文章
 先日、経理部から依頼のありましたシステム改修の件は、業務への影響が大きく、その調整に人員を割けない状況であるため、いますぐには対応できません(主文)。
 システム改修を実施するには、次の事項について関係者と協議の上、改修方針に同意を得る必要があります。
1. ・・・以下同文・・・

言いたいことがハッキリしない原因は、書き手が主文をハッキリ書かないからです。これは、100%書き手の責任です。小説やエッセイであれば、「読者の想像に任せる」ことも問題ありませんが、ビジネス文書においては致命的です。

ビジネス文書を分かりやすく書くためには、主文を明記しなければなりません。

主文は、「だから何?」を繰り返して見つける

何が主文か、自分が本当に伝えたいことは何か、ということを、ときには書き手自身も分かっていない場合があります。

そのような場合に、主文を見つける手順は次のとおりです。

  1. まず読み手に伝えるべきだと思う事を箇条書きのメモに書き出します。
  2. そして、書き出した各項目について、「だから何なの?」「そうだったらどうなるの?」と自ら問いかけてください。その答えに対して、更に何回か「だから何?」を繰り返し自問自答します。
  3. そのうち、質疑応答の多くが同じ答えに集約されてきたら、それがあなたの伝えたいこと=主文です。

先の例で確認してみましょう。

工期は、経理部との詳細検討の結果によって変動する ⇒だから何:工期を確定させるには、詳細検討が必要だ ⇒だから何:経理部と協議が必要だ
システム改修の影響は、事業部の業務フローに大きな影響を与える ⇒だから何:事業部の業務フローを見直す必要がある ⇒だから何:事業部と協議が必要だ
取引先とのデータ連携の一部を変更する必要がある ⇒だから何:取引先に対応してもらう必要がある ⇒だから何:取引先と協議が必要だ
現在、総務部のシステム開発に取り組んでおり、人員が不足している ⇒だから何:総務部要望のシステム開発とどちらが優先か、調整する必要がある ⇒だから何:総務部と協議が必要だ
⇒関係者と協議が必要だ ⇒だから何:関係者の協力がなければ、システム改修は困難だ ⇒だから何:関係者の同意が得られるならば、システム改修は可能だ

 

主文に結びつかない情報は、書かない

もし、「だから何?」の自問自答を繰り返しても同じ答えに集約されない項目があったとしたら、それは、あなたが伝えたいこと(主文)とは無関係な情報です。文章に含めるべきではありません。

主文が2つ以上残ったら?

「だから何?」の自問自答を繰り返して、2つ以上の答えが残ったときは、それらを合わせて1つの主文に表現します。 例えば「Aするべきだ」と「Bするべきだ」の2つの答えに集約されたならば、主文は「AとBをするべきだ」になります。

はじめに主文を伝える

書き手は、文章の内容に入る前に、主文を明らかにするべきです。文章の読み手にとって、はじめに内容の大枠を知った上で細かい内容に入っていく方が、その反対の場合より、文章の全体像を把握しやすく分かりやすいものになることは明らかだからです。

主文は、そのまま文章のタイトルにも使えます

これによって、少なくとも「何が言いたいのか分からない」という評価は回避できます。

主文をあいまいにしない

主文は、明白に書くべきです。しかし、「もし書いたことが間違っていて、後で責任を問われたら嫌だ」という自信の無さから、わざと主文を書かなかったり、ぼかして書いたりする人がいます。そのような責任逃れの態度は、職務上の責任を果たしているとは言えないため、結局責任を問われることになり、自分のためになりません。結論に自信が持てないなら、自信が持てるまでその根拠を確認し、あくまで主文は明白に書くようにします。

さて、この記事で筆者が一番言いたかったこと=主文は何だったでしょうか。もちろん、「主文を明らかにせよ」ですね。